死神様

昨日100歳のおばあさんが亡くなられました。

仕事の関係で、知っていた方です。

去年までは老人車を押して、てくてく歩いておられました。

耳が遠くて、一方通行な会話でしたが、笑うととても可愛い(という言葉が似合う)方でした。

その方に、敬意と弔いの意を込めて、

ひとりさんのこのお話を送りたいと思います。

 

死神というのがいます。

それでこの死神というのは、

何故「神」という字がついているのだろうか?というお話をします。

 

皆さんが思っているような、薄汚れた着物を着たり、

鎌を持っていたり、あれは本当の死神ではありません。

妖怪とか物の怪とか悪魔とかそういうのと、一緒にしてます。

 

本当の死神というのは神様なんです。

だから一つの「天使」と言ってもいいです。

何故かって言うと、人間は、過去を引きずって生きています。

小さい時失敗した、親に怒られた、色んなことを引きずってきてます。

その、ひきずってる過去から、切り離してくれるのは、実は、

「死」という神様なんです。

これはどういうことですか?っていうと、

例えばあなたが1ヶ月の命だ「今日一日の命ですよ」と言われたとします。

そうすると、もし今日一日の命だとしたら、

生きたい所行こう、

それから愛する人に「お世話になりました」って言おうとか、

「死」ということを考えます、

親もずっと生きてるんじゃなくて、いつ死んじゃうか分かんないって言うと、

ああ、ごはんのひとつも食べさせたいなあ

お寿司でもたべさせたいなあ、

あんな貧しい中から、よく育ててくれたなあ、とか、

色んな事を思います。

それと、私は仕事をしてて、いつも「死」というものを考えます。

そうすると、ひとたび「死」というものにあうと、

どんな会社を作り、どんな財産をつくり、どんなに土地を持っても、

一瞬にして無くなります。

そうすると人間て、何をするべきなんだろう?

ただ死を恐れるんじゃなくて、

「死」というものがあるんだ、って考えただけで、

そんなに業突く張り(ごうつくばり)みたいなことしなくったって、いいんだ、

今幸せじゃないかって、

ほんとにこのテープでも入れた方がいいんじゃないか、

人が喜ぶ講演会でもした方がいいんじゃないかって、思います。

 

人は死というものを恐れて、毛嫌いして生きていたけれども、

それは悪魔がそうさせるんです。

 

死神が、とりついて自殺しちゃったとかあるけど、

それは、寿命が来る前に、勝手に取りつく物の怪か、悪魔です。

 

昔こういう映画があって、私も小さいんでよく覚えてないけど、

ああこの人分かってるなあと思ったことがあります。

それは、

 

あるおばあさんが、もう、年老いちゃったんだけど、

死神が来るのを恐れて、

入口という入口に、死神が入れないような、

そういうようなおまじないをして、

ただ、ただ、歳とって、顔が恐怖に震えていた時、

1人の旅の青年が来て、「コンコン」とやって、

その青年がものすごく優しくて、

「一晩だけ泊めて下さい」って言って、

その人を見て、安心して中に入れたら、

「おばあさん、もう頑張らなくていいんですよ」

「大変だったですね」

「私と一緒に行きましょう」って言って、

優しく、その神様に抱かれるようにして、

死んでった。

 

それで、人は死んでまた生まれ変わり、何度も生まれ変わり、するものだから、その迎えに来てくれる「死」っていうのを

怖いものだ、怖いものだと思わせようとするのは、

悪魔の仕業なの。

 

それより、もしかしたら、自分もいつ死ぬか分からないんだ、

そして、相手も、目の前にいる人も、いつ死ぬか分からないんだ、

そう思ったら、イライラしてががががーってね、

お前なんか大っ嫌いだってね、

ホントは愛しているのに言っちゃうこともあるの、

 

でも、その相手が死んじゃったら、

あいつにおれ、なんてこと言っちゃったんだろ、

逆に言ったら、自分が死んじゃったら、

すごくね、子どもやなんか愛してたのに、

「お前なんかほんとは大っ嫌いだ」って言っちゃった、

その日に死んじゃったら、自分はなんて思うだろう?

 

そういうことを考えただけで、

人はまともに、「愛の道」に戻れるの。

だから、「死」というものに、神という字がついているっていうのは、

ちゃんとした神なんであって、

あなたたちが思っている、死神は、物の怪だよ。

本当はそういうものじゃないの、

もっと優しくて、迎えに来てくれて、

その人間がさまよわないように、

迎えに来てくれる、もっと優しいものなの。

その「死」という故郷へ連れてってくれるための、

道崎案内人、

そのことを思っただけで、

人は、過去の嫌なことなんて、考えてる必要もないし、考えられないの。

もう、やることがちゃんと見えてくるの。

それを、死というものを怖がらせ、思い出させないようにして、

そうやって生きているのが、悪魔の遣いで、

 

あなたたちは、悪魔を神だと思い、

神を悪魔のように思ってるの。

 

だから不幸が続くんだよ。

 

何年も前にこのお話を聴いたときに、たくさん泣きました。

死を怖がって震えていたおばあさんが、

死神様に抱かれるように、

死を迎えられて本当によかったと思います。

「死」に感謝したいと思います。